
◇就業規則・給与規程・退職金規程の作成・整備・改正
◇雇用関係の開始から終了まで
◇関連法規の改正、新設に対応した整備が行われていますか
労働契約法・パートタイム労働法への対応
◇社会経済環境の変化や企業の実状にあった作成運用が行われていますか
CSRによる組織統治、人権、労働慣行・・・
◆企業経営と就業規則
⇔ 有事への対応 ⇔ BCP策定
■大地震や感染症の流行、テロなどの災害・有事の際の危機管理の手法としての「事業継続計画」(BCP)、業務への影響を最小限に抑え、事業の早期再開に実効性ある対策を構築できるか企業の危機管理が問われています。
昨年5月の弱毒性新型インフルエンザの影響を受けて、新たに対策を作成した企業も多く、出張禁止、自宅待機などの対策も講じられました。
強毒性新型インフルエンザの流行で想定される欠勤や自宅待機への具体的対応などは、まだ進んではいないようです。
食中毒、パンデミック、製造物責任・・・脅威への事前対策が必要です。
手洗い・うがいなど、従業員や家族への感染予防策の指導、申告ルール化、健康管理・出退勤の適切な管理・運営など、国、行政だけでなく、地域とともに企業にもその対策を講ずることが求められています。
東京都では中小企業が災害時事業継続のための手順書を作成する際の支援を始める。
新型インフルエンザの流行状況について⇒
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/message03.pdf
就業規則とは何か
企業で働くうえで労使の最低限の就業条件を定めたものが就業規則といえます。しかし近時、企業を取り巻く経営環境が激変しております。個人情報保護の取扱い、うつ病などのメンタルヘルス、ワークシェアリング、企業情報漏洩防止など・・・。その中には様々なリスクが存在し、事前に予測して回避するための対策及び事後リスクへの対応策など、また業種業態により対応すべき労務管理が異なります。それらに加え個別企業の実態に対応した内容を明記し整備・周知・管理しておくべきです。
個別労使紛争も多発しており、企業経営を取り巻く環境には様々なリスクが存在し、事前に予測して回避するための対策及び事後リスクヘッジなど、緊急事態を未然に防止する仕組みを構築する必要があります。
平成22年4月1日から改正労基法が施行されました。長時間労働を抑制し、仕事と生活の調和のとれたワーク・ライフ・バランス社会の実現を目指して、労働時間に係る制度の見直し等が行われました。時間外労働の割増賃金率が引き上げられました。
就業規則は企業の健全な発展のために必要不可欠なもの
企業は、その経営理念と経営方針に沿って就業ルールを作成し、従業員は、その規則を遵守し、企業目的の遂行に努力する。
現行の労基法では、常時10人以上(パート、アルバイトも含めて)使用する使用者は、労働条件の内容をを明記した就業規則を作成し、従業員代表の意見書を添付して労働基準監督署への届出が義務付けられています。
時間外労働など労使協定の締結・届出が必要なものもあります。
実際に意見聴取を行わなかったり、一方的に作成した意見書や協定届は後日、トラブルの原因となり、膨大な時間と労力を要することとなり、事業経営活動に支障をきたす結果となります。
安易な考えかたで作成、届出することは禁物です。
また、たとえ10人未満であっても変形労働時間制、裁量労働制、年俸制などを採用した就業条件であれば、しっかりした就業条件を定めた就業規則が必要となります。
管理職と残業手当
労基法では「監督若しくは管理の地位にある者には労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない」と定めています。(但し、深夜業及び年休に関しては適用されることになる)
管理監督者の範囲については昭和22年の行政通達や平成9年の裁判例に示されているが、管理監督者に該当するか否かは
@ 経営者と一体的な立場にあるかどうか
A 自らの勤務に時間管理を受けているかどうか
B その地位に対して何らかの特別給与が支払われているかどうか
以上3点の状況を総合し勤務の実態に即して判断されることになります。
従来の判決例をみると、管理監督者性は容易には認められない傾向にあります。
平成20年1月28日のマックの判決でも同じことが言われています。
それではどうしたらよいのか?
・制度変更するのか?
・過去分はどうするのか?
・精算するのか?
・示談にするのか?
・裁判にするのか?
・控訴するのか?
・職務権限を減らして残業手当の支給対象者にするのか?
・残業を付ける方法はどうするのか?
名ばかり管理職対策へのご相談が増えてきております。
監督署からの是正勧告を受ける前に対応策を講じて置きましょう。
※多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について〜具体的な判断要素を整理した通達〜【PDF】
※同上 管理監督者についてのQ&A
就業規則と労働契約
就業規則の法規制の歴史と政策
就業規則と現行労基法
労働契約法制と就業規則
就業形態の多様化と就業規則
賃金規程・退職金規程
就業規則と労働契約
「就業規則」と「労働契約」とは根本的に異なる別個の法制度である。
労基法2条2項が、労使双方に労働協約、労働契約と並んで就業規則の遵守義務、誠実履行義務を明言し、行政当局が、労基法15条の労働条件明示義務にいう「明示」は就業規則の明示で足りるとの通達を発していることは(昭和29・6・29基発355号)就業規則の労働条件設定が法制度上のそれであるかのような印象を与えている。 現行の労基法・就業規則法制においては 就業規則と労働契約 は労働条件の設定と展開に際して、同一の機能をはたすものと受け止められ、就業規則と労働契約は実態として混同される状況にあるといえる。
就業規則についての法的性質論には、法規範説、契約説及び事実規範説などがあり、それぞれの立場に立つ判例がみられるが、秋北バス事件判決(昭和43年12月最高裁大法廷)で、個別的な労働契約における労働条件の決定は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めている限り、法的規範性が認められるとしている。
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就業規則の法規制の歴史と政策
明治初期の就業規則・・・日本が殖産興業の国是のもとに開設した官営工場には、集団的雇用管理の手段としての就業の秩序と規律を遵守させるための命令規則があった。
明治31(1898)年、「職工規則」が取り上げられたが、就業規則による規制は雇用関係が存在しないために、同35(1902)年の工場法案では就業規則規制は断念された。
その後、同44(1911)年工場法が制定されたが就業規則規制は大正15(1926)年改正工場法施行令によって実現された。それらが現行労基法に引き継がれている。
大正15年法制は、「職工ノ就業ニ関スル諸条件之ニ関スル規律ノ内容ヲ明ニシテ之ヲ職工ニ了知セシメ工場作業ノ進行ノ円満ヲ期セムトスルモノ」(工場法施行令)つまり就業条件、規律事項を明確化した就業規則の作成を義務付け、行政官庁への届出、変更命令のもとにその内容の適正化を図るというものだった。
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就業規則と現行労基法
昭和22(1947)年制定の現行労基法は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、労働時間制度、賃金の決定、計算方法、退職に関する事項等の集団的、統一的な労働条件内容を明記する就業規則の作成を罰則をもって義務付けている。(89条、120条)
新たに使用者に就業規則作成・変更時の過半数労働者代表の意見聴取義務を課し(90条)、労働契約に対する最低労働条件保障的効力を規定した。(93条)
その目的・趣旨はなんであったのか。一般的には、労働条件の客観化・明確化による労働者利益擁護のための、労使の私的自治⇒契約関係への国家による後見的介入のための法システムといえよう。
◆労働条件決定の基本原則は労使対等決定原則(2条1項)
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労働契約法制と就業規則
近時、就業形態の多様化により雇用・労働関係を取り巻く状況の変化に伴い、労働条件の小グループ化や労働条件の変更の増加が見られるが、解雇に係る紛争や条件引下げに係る紛争を始め個別労働関係紛争が増加している。
平成20年3月1日に施行された「労働契約法」では、望ましい労働契約の労使のあり方を事業主と労働者の双方に周知し、円満かつ適正な労使関係を構築し、紛争を未然に防ごうとしている。
その基本的考え方は、就業規則をめぐるルール等を明確にすること
1. 就業規則と個別労働契約の関係の明確化 (合意成立の推定の必要)
2. 就業規則を変更する際のルールの明確化 (変更の合意成立の推定の必要)
3. 就業規則の必要記載事項の追加 (転居を伴う配転・出向、休職・懲戒事由等)
4. 契約締結時の明示事項の追加 (転居を伴う配転・出向)書面による明示方法
5. 採用内定取消,試用期間中の解雇へのルール適用
6. 懲戒等の根拠条文 (濫用法理の設定)
7. その他労働契約終了場面でのルールの明確化 (解雇、解雇の金銭的解決等)
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就業形態の多様化と就業規則
就業形態の多様化に伴い、正規雇用の割合が低下し、パート、アルバイト、派遣労働者、契約社員、嘱託社員など様々な名称を持つ非正規雇用が増加している。 特に、週35時間以上のフルタイム者と変化ない非正規の従業員が増加している(派遣・契約・嘱託)。 製造業における請負労働者としての従事者も増加している。 非正規雇用によるコスト抑制も企業収益に貢献している。適用範囲を区分した規定の作成が重要である。
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賃金規程・退職金規程
労基法89条には「賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項」について作成し、変更した場合においても行政官庁に届出しなければならないとある。又、同法11条には「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」 と定義しており、就業規則、労働契約、労働協約により、予め支給条件が明確である場合の退職手当も賃金である。
1980年代の円熟した「能力主義」賃金制度に代り、90年代以降経済環境の激変から日本の賃金制度は「成果主義」賃金制度が追求されてきた。能力と成果は因果関係があって企業は従業員の能力開発を図り、能力を活用しながら「成果」を上げていかねばならない。
要約すると、職務遂行能力(職能資格等級)から役割(役割等級)へと変化した。仕事の結果を評価して支払われる賃金である。
多様化した就業形態に対応した就業規則、賃金規程の適用や柔軟な運用が求められる。
改正高年齢者雇用安定法により、定年年齢の引き上げ、継続雇用制度の導入や再雇用契約、適格年金や厚生年金基金の廃止、新企業年金制度の採用などによる退職金制度、労働条件の改正、切り下げなど企業経営を取り巻く課題は山積している。過去の判例を評価・吟味して高度の必要性、合理性を有し、かつ必要な手順を踏んだ拘束力を持ち得る就業規則や賃金規定の改正が肝心である。
退職金制度も年功的なものから能力主義や成果主義制度の退職金制度に移行すべきであろう。
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